VINTAGE展 プラートの繊維博物館を訪ねて
イタリア中部のトスカーナ州プラートにある繊維博物館を訪ね企画展を見学した。「VINTAGE――生きることの抑えきれない魅惑」とは、15世紀のコスチュームの物語から始まるモードへのオマージュである。
プラートは、12世紀にさかのぼる毛織物製品の産地である。州都フィレンツェが14世紀後半には織物工業の最先進地として高級品を生産しルネサンス文化の繚乱たる花を咲かせたのに対して、プラートは大衆品の産地であった。しかし、現在ではイタリア最大の毛織物産地である。ウールや絹の動物性繊維、綿などの植物性繊維や化学繊維を素材としたテキスタイル産業の発展によってモードの世界を下支えしてきた。
かつて庶民にとって生地は、高価なものであった。擦り切れた衣服は、ほどかれて縫い合わされ再生した。しかし、産業革命による大量生産は、大衆の手に容易に届くものとした。これは、現在のファストファッションにつながっている。
1968年パリの「五月革命」に遭遇した三宅一生は、デモに参加する学生達の生き生きとした姿を見て彼等の着る服をデザインしたいと思ったという。'70年代から'80年代にかけてこうした日本のデザイナー達がパリコレクションの舞台にモードの「創造的破壊」者として登場した。展示会の最後には、川久保玲、三宅一生、山本耀司の作品が陳列されていた。無名の人々の営為によって生産されるテキスタイルから触発されたデザイナー達の格闘の痕跡がVINTAGEであろう。
2013年3月18日