ファクトリーブランド
2009年9月上旬、夏の長いバカンスから明けたイタリアは秋へと向かって動き始めた。昨秋の金融恐慌から一年、活況を呈していたロシア向けの輸出も今ではすっかり停滞してしまった。イタリアファッションの最大顧客であるアメリカや日本にもかつての勢いはない。
訪問先の中小バッグメーカーの社長やセールスマネージャーと情報交換した。日本の某TVショッピングと組んで一万円程度の安価なバッグを販売した。一度の放送で約三千本が売れた。しかし、それは自分達の望むところではない。多様なデザインで品質に自信の持てる製品をマーケットに提供したいので、今ではTVショッピングはやっていないと語っていた。
現在、世界を席巻しているのはH&MやZARAといったファストファッションである。我が国においてもユニクロの快進撃は勢いが止まらないようにも見える。中国を初めとする途上国での低コストの大量生産と先進国での販売網。1970年を前後する消費社会の変質に対応し得たのはプレタポルテというよりむしろこうしたSPA(製造小売業)の企業群ではなかったかとさえ思えてくる。因みに世界で最初にSPAを始めたのは、1969年創業のアメリカのギャップ社。このギャップモデルをブランド展開に応用し成功を納めたのが、バッグのラグジュアリーブランド群である。
翻ってイタリアの中小バッグメーカーは、有名ブランドの下請や自社ブランドを作って売りだしたりしている。ルネサンス以来の伝統は、素材から触発されたアルティザンによるデザインの創造性にある。無論、大量生産と大量販売には不向きなことは言うまでもないが、少量多品種の生産には適している。こうしたルネサンス伝統を受け継いだ地域のファクトリーブランドを日本の皆様にお届けするサイトをより充実させる意を強くした旅であった。
フィレンツェにて
2009年9月13日